各部名称

一般的なカートリッジ式万年筆の場合、各部品は上図の様に呼ばれます。国産メーカーではキャップを鞘(さや)と呼称している場合もあります。軸はかつてはエボナイトやセルロイドで作られることが多かったのですが、これらの材料は一本一本切削、研磨加工により製造されるため大量生産には不向きであり、一部の高級品のみに限定されています。現在は量産の容易なプラスチック射出成形、金属押し出し加工による軸が大多数です。近年の大半のモデルの天ビスは、硬く締められている(あるいは永久固定)ので安易に分解する事が不可能になっています。

nib

ペン先はペン芯と対になっています。ペン芯には細い溝が設けられており毛管現象を利用してインク室内のインクをペン先に運ぶ役割があります。また運んだインクの分だけ空気をインク室内の戻すという重要な働きも兼ねています。ペン先は外すことが容易なモデルもありますが、大方は半固定状態であり工場で調整されているので、無用な取り外しは避けた方が宜しいでしょう。

多くの高級万年筆のペン先は金の合金で出来ています。これは装飾性を高めるという意味もありますが、インクに対して腐食せず、柔らかい弾力が得られるという実用的な意味があります。
市販品では14金、18金がポピュラーです。ここで注意して頂きたいのは金の混合率が高く高価な18金の方が柔らかい書き味と思われがちな事です。ペン先の柔らかさ、硬さは材質云々よりもペン先そのものの形状の違いの要因が強いです。14金は100年以上の歴史がありますが18金は比較的近代であり万年筆ペン先としての実績では14金が遙かに勝っています。ただし14金は長期的に見るとインクの酸化による表面変色の度合いが強く(軽く磨けば変色は落ちますが)、装飾性、貴金属としての希少性を考えると18金に軍配があがるでしょう。
数千円代の廉価品は合金製ペン先を使用しておりますが、近年は耐食性、弾力性が飛躍的に向上し、金ペンと大差無い書き味のものも登場しています。廉価の傑作万年筆パーカー21で使用している合金製ペン先などは発売40年経て酷使しても腐食せず健在だったりします。
ペン先表面を見るとメーカー名の他に刻印が入っている場合があります。18金の場合は18C、18K、750、14金の場合は14C、14K、585といった表記が一般的です。その様な表記が無いペン先は例え金色であっても合金製(金メッキ仕上げ、ゴールドプレートとも呼ぶ)である場合が多いです。また金ペンであっても全体をロジウムメッキ(プラチナ色)で仕上げている場合もあり、刻印でペンの種類を見極めるのがもっとも正確です。

penpoint

ペン先端部分を注意深く見ると丸く盛り上がっているのがお分かり頂けると思います。この部分をペンポイントと呼び、イリドスミンという合金が溶接されています。これはイリジウムを始めプラチナ属の金属が混じった硬い金属で、紙面との摩耗に大変強くなっています。
ペンポイントは出荷時に滑らかに研磨調整されており、紙触りが良くなっておりますが、筆記のスタイルはまちまちで、角度によって引っかかり等が生じ書きにくい事も有り得ます。メーカーによっては最初からペンポイントが斜めに研がれている場合もありますが、確実には再度調整するのがベストです。
ペンポイントの大きさ、形状により、線幅、字の印象が異なってきます。詳細は「ペン先の種類」をご覧下さい。